7月に入り、プール開きや海開きが各地で行われています。今回のコラムでは、競技コーチング・水泳指導が専門の福岡大学スポーツ科学部・田場昭一郎准教授が、「夏季シーズンに身につけよう!『遊泳術』と『自己保全能力』」をテーマに全6回にわたってお伝えします。
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<今後の更新予定>
- 第1回:日本における水泳の歴史
- 第2回:競技としての水泳
- 第3回:小学校における水泳指導
- 第4回:器材を使用した水泳指導
- 第5回:大学での水泳教育の現状1
- 第6回:大学での水泳教育の現状2
スポーツ科学部の学生は、体力に自信のある学生がほとんどですが、これまでのコラムでも書いたように「水泳に苦手意識を持っている」という学生も多く存在します。また年々、泳げない学生が増加傾向にあるのも事実です。しかし水泳は、スポーツ科学部の必修科目なので泳げるようにならなければ卒業できません。

2015年度の水泳Iを履修した学生の授業前後の平泳ぎの泳力テストの結果と、水泳教育に関するアンケート調査では、主観的に「泳げる」と回答した学生は65.5%、「泳げない」と回答した学生は34.5%でした。しかし、平泳ぎのノルマ(3分間で125m以上)の達成率は、「泳げる」と回答した学生が54.5%、「泳げない」と回答した学生が7.9%でした。また「泳げない」と回答した学生のうち68.8%が「あおり足」でした。つまり「平泳ぎの足ができていないこと」を認識していない学生が多いことがわかりました。
授業の結果、履修した学生の3分間の平泳ぎの平均距離は、2015年度(授業前:123.7m授業後:137.3m)2016年度(授業前:115.8m、授業後:137.8m)と向上しました。1週間に1度の授業で泳距離は飛躍的に伸び「あおり足」が改善されました。日常にない運動形態なので練習すると直ぐに上達します。また一度泳げるようになったら、自転車に乗る感覚と同様に一生忘れることはありません。
小・中・高校では25mプールで授業を行います。したがって25mプールを端から端まで泳ぎ切ることができれば「泳げる」と認識している児童や生徒がほとんどです。しかし、その泳力は約30秒程度で、流れのある河川や波の高い海、足のつかない環境でも「泳げる」ということには繋がりません。
「水に逆らうことなく水の流れに身を任せるように自然体でいられること」
泳げるということ、それは距離や時間だけで判断できるものではないということです。
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